蒼 穹

 20. 蒼穹

「レッドインパルスは当初、隊長以下四名、計五名で結成されたのだ」

 南部博士はそう語る。

「きみたちの前に現れたときは三名だったが……それ以前に二名を失っている。搭乗機もろともにな。機は失われたものと思っていた。しかしまさか、ギャラクターの手中にあったとは――」
「機体はぴかぴかに再現されてるよ。でも肝心の機関部が」
「うむ、機体が破損して墜落が回避できなくなった時、パイロットは脱出するのだが、同時に機関部を破壊する装置を、隊長は取りつけていたようだ。こちら側の技術が敵に渡らないようにするためだ」
「あのー、校長先生」
「ん?」
「あの飛行機、エンジン乗っけたら、動くんですか?」
「ああ動くとも。元通りに空を飛べるようになる」
「僕が乗ります! たぶん操縦できる!」

 一同、えっ、とジョージ少年を見た。

「コクピットに入ってみてわかりました。僕はみたことがある。小さいときに父さんと遊んだ、飛行機の操縦バーチャルゲーム、あれによく似てた!」
「――あれか! 電気代がかさむからって、やめてしまったが」
「あ、僕はちょいちょいやってた」
「なんだって!? おまえなー。父さんは身に覚えのない咎で何度母さんに怒られたことか!!」
「まあまあ。家庭内のけんかは家へ帰ってからにしてくれたまえ。そうだ、ジョージ……」

 博士はそう言ったきり、なにごとか考え込んでしまった。その真剣な面持ちはまるで、学者である。やがて顔をあげると、言った。「そうだ、ジョージ。機体を直そう。もう一度飛べるように」

「え!? ほ、ほんとうに!?」
「といっても、これではない。これはもっぱら戦闘用に作られている。戦闘のプロ向きなのだ。今の時代にそんなものは不要だ。闘う相手がいないのだから。
実は、ジョージ、きみが遊んだゲームは私が作ったのだが、元になったのはこれではない。こんなくろうと向けではなく、より洗練され、誰にでも扱える、それこそこどもがゲームとして遊べるようなシンプルな操縦性、私の最高傑作。それがモデルなのだよ。その名も『G-1号機』という」

「な、南部博士!!」「校長先生!!」
 驚きに目を見張ったケンとジョージが同時にずいっと前に進み出た。

「G-1号機を、ジョージ、きみのために整備しよう。どのみち動力機関に手を入れねばならんし」
「僕のために!? ほんとですか!!」
「ちょ、ちょっと。ここに名パイロットがいるんですが」
「なにを言っているのだケン」南部博士の眼差しは鋭く冷たく、執念深い。「きみは、若者の未来を奪うつもりかね?」
「いやその、俺の未来は?」
「きみには家族のために身を粉にして働くという、重大な使命があるではないか」
「そうよそうよ」
「そ、そんな――」

「人々が空を見上げる。そこには『赤い衝撃』ではなく、平和と希望の白い翼が舞うべきなのだ――」



 基地の出入り口は全開、外から穢れのない冷気と太陽光が射し込んできていた。



「ああ。見たまえ、あの青い空を。天然の核融合炉、太陽が燃え、熱と希望を放っている。いい朝だ――!」



 二十年前のギャラクターの技術力に頼らなければならないのは、実は、ものすごく悔しい! などという本心は微塵も見せず、南部博士が指さす先には、蒼穹が光り輝いている。





おわり



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