蒼 穹
18. 彼らは同時に叫んだ。「そんなばかな!」
「それはともかく……」
博士は気を取り直して、かきむしった髪をていねいに整え直し、
「この装置の解析にとりかからねば! おお! 核融合炉! これでエネルギー問題がきれいさっぱり解決する! こんな日がこようとは! 生きていてよかった!」瞳がきらきらと輝いている。
「ジョージ、あなたが着てるその高そうなカシミヤのコート、博士のじゃない?」
「そうだ、寒かったら父さんのを貸してやる。それは校長先生、いや、博士に返しなさい。お年寄りから防寒着と生きがいを奪ってはいけない」
とたんに、博士の眉がぴくりと動いた。「待ちたまえ。ケン」
「は?」
「今、お年寄り、と言ったな。それは私のことかね」
「え、いや、その」
「私を年寄り扱いするとは。なるほど。きみの気持ちはよくわかった」
「あっあのっ博士っ」
「決めた。学期末の賞与は無しだ」
ケンとジュンは同時に叫んだ。「そんなばかな!!」
「じょうだんじゃないわ! それではうちの住宅ローンが払えません!!」
「知るもんか。恨みたかったら、ジュン、私を年寄り呼ばわりした、きみのご主人を恨みたまえ」
「ケ、ケンのばかー! とんちきー!」
「とんちきって――。おい竜、笑ってないで助けてくれ!」
「げらげらげらあーすまんすまんおかしかったんでつい」
「お、おかしかったんでつい、だと!? いまだに親のすねをかじっているおまえに! 俺がいまどんな気持ちでいるか、わかりはしまい!!」
「わかんねーよげらげらげら」
「きさまー!! そこまで俺を、甘くみてたのか!!」
「ふたりともいいかげんにしてっ! 一刻もはやく博士のご機嫌をとらないと、ほんとに取り返しのつかないことにっ!!」