蒼 穹
15. 私でさえ、理論としてしか知らなかったのだ
長身の白髪の男が腕まくりしたYシャツにベストという姿でパネルの前を行ったり来たりしている。少し離れたところに少年が立ちすくんでいた。Tシャツの上に羽織っている灰色のカシミヤのコートは白髪の男のものらしい。
パネルは何列も並び、何かをコントロールしている。一群の制御装置。その前で少年は我を忘れてぼう然としていた。生まれて初めて目にする電子機器は、めまいを覚えるほど複雑で、そらおそろしいまでにきらびやかだった。電力が惜しげもなく使われ、色とりどりの光が目まぐるしく明滅し、小さな画面には刻々と変わる数字が映し出されている。それはまるで――魔法の世界。
白髪の男はやがて振り向き、そこにいた少年に言った。「凄い!」、と。
「まあ! ジョージ!」
「おまえも付いてきたのか」
少年は言葉もなくただうなずいた。生まれて初めて見る科学技術というものに圧倒されてしまっていた。
「ケン、ジュン、きみたちはなんというものを見つけてくれたのだ!!」
「博士――あたしわけがわからなくて――」ジュンは言い訳するように言った。
「いや、きみが知らないのも無理はない。私でさえ、理論としてしか、知らなかったのだ」
「博士、これはいったい」
「核融合炉だ」